日本国際経済法学会 設立の経緯

本学会は1年余りの慎重な準備期間を経て1991 年11 月2 日、東京大学法学部25 番教室において第一回研究大会と同時に開催された設立総会の議を経て、正式に発足した。本学会の設立を呼び掛けた1991 年3 月28 日付けの設立趣意書は、本学会の目的を次のように述べている。

「わが国と米国との経済摩擦は、先般の日米構造協議にみられるように極めて厳しいものがあります。このようなわが国と米国およびEC との経済摩擦のみならず、今日の国際経済関係を展望してみますと、一面において米加自由貿易協定や1992 年のEC 市場統合などリージョナリズムの台頭がみられるなかで、他面においてウルグアイ・ラウンド交渉が難航しながらも懸命に続けられており、多角的貿易機構(MTO)案などGATT の機能強化が構想されております。さらに目を転じて、依然停滞に苦しむ発展途上国の経済、一昨年来の東欧の民主革命による社会主義圏の市場経済化、ソ連のGATT へのオブザーバー参加等々を見てきますと、これらはいずれも90 年代から21 世紀に掛けての国際経済システムの大変動を予想させるものがあり、また、世界経済における日本の役割も高まる一方で、国際経済法の重要性は今後ますます増大していくと考えられます。

このような時にあたり、ひるがえってわが国の国際経済法研究の現状をかえりみますと、それぞれの分野での個々の努力にも拘らず、全体としてみた場合、欧米諸国の研究に大きく遅れをとっていることは否定できない事実であります。この状況を打破するためには、国際法、国内法、外国法のそれぞれの分野で分散して行われている諸研究を国際経済法学会に結集するとともに、官庁、企業、法律事務所その他において国際経済法関係の実践・実務に日々携わっておられる方々との協力を深めていく必要があると考えます。すなわちここに日本国際経済法学会(The Japan Association of International Economic Law)の設立を企図する所以であります。そうして、次の世代を担う国際経済法研究者の育成をはかることも、この学会の重要な任務の一つと考えます。

1990 年代の国際経済法関係の法的諸問題を総合的かつ多角的に考慮して未来への展望を切り開くため、各方面の研究者・実務家の皆様がお一人でも多くご参加下さいまして、この学会の発展にご協力くださるよう心からお願い申し上げる次第です。」

この設立趣意書には、その意図をよく反映するように、国際法、国内法(国際私法、租税法、経済法などを含む)、外国法などの分野で活躍する学者および官庁、企業、法律事務所の実務家56 人が発起人として名を連ねている。なお、本学会の設立の経緯については、宮坂富之助「日本国際経済法学会の創立と今後の活動」『ジュリスト』995 号、1992 年2 月15 日、70-71頁に詳しいのでご参照いただきたい。

(国際経済法学会年報 第1号(1992 )pp.168-169 より抜粋)